2013年
6月
27日
木
ありがたいことに、梅雨だと思えないような晴天に恵まれ、岐阜のとある山道を登った。水晶を採集するのが目的だ。やがて汗が額ににじむようになり、水分補給を呼びかけようと足を止めた。
ふと、山道の脇を見ると、真っ赤に熟れた実が目に入ってきた。
「おいしいから食べていいよ!」と声をかけると、K君が真っ先に一番大きな実を摘んで口に含んだ。「あまくてうんめ!………けど最後は苦い!!」と言いながらも、すでに次の実に手を伸ばしている!
彼は正確な味覚を持っているようだ。
ちなみに、彼は、昨年の夏、釣ったザリガニをアスファルトの熱で焼いて?食べた経験の持ち主である。
「だから、ニガイチゴ!って言うんだ。」と私。
いつから、おやつはお金を出して買うものになってしまったのだろう。
自然が少なくなったと言われるが、少なくなったのは、むしろ私たち人間の、自然に対する関心や知恵、そして自然の中にどっぷりと浸かる経験なのかもしれない。
ふと、そんなことを思いながら、みんなで、甘くてちょっぴり苦い自然のおやつを頂きました。
ごちそうさまでした!
2013年
6月
20日
木
岩の上から水中に飛び込む。
ただこれだけの事なのに、子ども達にとっては楽しくてしょうがない体験の1つである。
考えてみると、子ども達が熱中する遊びは単純なものが多い。がけを駆け上がったり、木に登ってみたり、追いかけたり、追いかけられたり、隠れたり、探したり…
なぜ遊びは楽しいのだろう?簡単なようで難しい問題である。きっと、当の本人に尋ねてみても、明確な答えは返ってこないだろう。なぜなら、さんざん経験してきた私自身にも分からないのだから。
彼らはむしろこう答えるに違いない。「楽しい理由?そんなことどうでもいいよ!それよりいっしょに遊ぼうよ!」
本当の理由は、DNAが知っているのでは…最近私はこう思えてならない。
2013年
6月
16日
日
初めて岩の上から川に飛び込んだのはいつだっただろうか?
飛び込んだ瞬間、水中は全くの別世界となり、慌てて水上に出ると、とにかく近くの岩にしがみつく。ホットした瞬間、『できた!』という達成感と自信のような気持ちが沸き上がって来たような…もう何十年も昔の出来事だが、何となくこんな感じではなかったかという気がしている。
川にいれば、一日中、飛び込みばかりしていた。何度も何度も繰り返し、その内すこしでも高いところを目指すようになる。しかも、いったん飛び込むと、すぐには水面に上がらずに、そのまま岩の下の大きな魚を観察したり、息が続く限り潜り続けてみたりするようにもなる。
先月、ドルカスで行った天竜川の支流で川遊びをしたのだが、やはり飛び込みが中心となった。大きな羽黒トンボが目の前を行き来し、もうカジカがきれいな声で鳴いていた。
夏の風物詩というにはちょっと早すぎる光景では有るのだが。
2013年
6月
13日
木
「今からトパーズの取り方を説明するから集まりなさい!」
早く探したくてむずむずしている子ども達を、少し落ち着かせる意味もあって、ゆっくりと告げた。
「まず、川底にたまった砂利をスコップで取り、ザルにあけてキラキラした透明なものを探します。」「トパーズは重たいのでなるべく深いところにある砂利をとった方が見つけやすいです。」そう言って、まずはデモンストレーション。
「こうやって、明るいところで探すと…! ほら、本当に有った!」
わずか一回のデモンストレーションで、いきなりトパーズが見つかるとは、私自身予想もしていなかっただけに、喜びもひとしおだ。
子ども達も「スゲー!」「きれい!」「ぼくにも見せて!」と興奮している。
ただ、こんなに簡単に採集できると思われても困るのだが。
「トパーズは、横に状線がある水晶と違って、縦に状線があり、しかもその状線に対して90度で割れる完全な劈開が有ります。結晶は斜方晶系で硬度は8、比重は3.5~3.6です。」もし、こんな説明を初めにされたら、意味もわからず、むしろやる気が失せてしまうかもしれない。
自転車の練習を始めるのに、初めに理論を教える人はいないのと同じだ。
だから、まずはやってみせる。そしてすぐにやらせてあげる。
やっている中で、黙っていても子供は色々な発見をし、疑問を持ち、興味を広め深めていく。本物の体験であればあるほど、こうした効果は絶大だ。
その意味では、まさに自然は最高の教師であり、そうした教師に出会える事は、子供の人生にとって、貴重な宝物となるに違いない。
2013年
6月
08日
土
小学3、4、5、6,中学2年生。
今回、トパーズの採集に参加した7名のメンバー構成なのだが、まさに縦割りの集団となった。しかもドルカ歴6~7年のベテランが3名参加している。
それぞれ学校も学年も、もちろん性格も全く異なる集団が、同じ場所、同じ時間を共有し、およそ10時間もの間、一日活動を共にするのだ。その上、ドルカスは自由度が高いから色々な事が起こる。ビックリすること、ドキドキすること、お腹がよじれるほどおもしろいこと等々様々だ。
こうした環境の中で、自然に、生物が好きな後輩は、生物の好きな先輩の側に付き、その行動から色々と学ぶようになる。また、話好きな後輩は、話好きな先輩の側にいて、じっと聞き耳を立て、時々ニヤリと笑ったりしている。その間、先輩は後輩の面倒をよく見てくれるし、必要があれば指導もする。それは、かつて彼らが後輩であったとき、先輩達からしてもらった事を、今度は彼らがその経験や行動を紡いでいるのだ。
紡いでできた糸は、縦ばかりではなく、横にも斜めにも広がり、しかも太くて強いものとなる。だから、社会人や大学生となった先輩達との糸も、切れることなくつながっている。
こうして30年もの間、色々な糸が紡がれ、ドルカスという一枚の布が織り上げられているのだ。そしてそれはまだ続いている。
まさに、様々な体験を通して培ってきたつながりは、子ども達にとって、心強い宝物となるに違いない。
2013年
6月
07日
金
図鑑でしか見たことがなかったその実物が目の前にある!
その時の感動の大きさは、対象に対する興味や思い入れの強さに比例する。
今更言うまでもないが、どんなに写真や印刷の技術が進んでも、本物にはかなわない。
五感に対する情報量が圧倒的に違うからだ。
「食虫植物見つけた!」。トパーズを探すための金網に、R君はその植物を入れて私のもとに駆け寄ってきた。彼は生物に関する興味が大変強く、メンバーの中でも、その知識や採集において彼の右に出るものはいないほどだ。
「ほら、ちょうど今ここにハエが捕まってる!」 彼の指さす所をよく見ると、確かに5mmもない小さなハエが葉っぱに挟まれているのが見える。
『モウセンゴケ!?』 私は思わず自分の目を疑った。…と言うのも、これまでトパーズ採集に10年以上、2桁回数、同じ場所に通ってきているのに、一度も見つけた事がなかったからだ。
『まさかこんな所に!こんな身近に?』
子ども達と色々な体験を共にしていると、こうした経験は特別珍しいことではない。
彼らには生き生きとした知的好奇心があるからだ。
そのため、ただ見るだけではなく、“観る”からに違いない。
まさに子供にとっての知的好奇心は、発見や感動につながる宝物なのだ。
2013年
6月
05日
水
「お父さんと~お母さんと~お婆ちゃんと~、一番いいのは~おれっちの分で4個!絶対トパーズ4個採る!」
彼は大きな声でそう宣言して採集を始めた。
彼は宝探しをスタートしたばかりだが、私はもう素晴らしい宝物を発見してしまったのだ!
何と素晴らしい宝物だろう!私が見つけた宝石には、いくつかの結晶面があり、それぞれが独特の色でキラキラと輝いている。私はおもわず、誰にも気付かれないようニタリと笑ってしまった。
それぞれの結晶面をよく見ると、そこには次のような文字が書かれている。
私が見つけた宝物とは、彼の個性が表れた宣言であり、タイプである。つまり彼自身に関する貴重な情報なのだ。
このような情報は自分自身ではなかなか気付く事ができない。なぜならそれが当たり前だと思っているからだ。だからなおさら、こうしたことは当たり前ではなく、素晴らしい宝物であることを伝えてあげる第三者が必要なのだ。
自分を知るということは、必ずしも自分だけの力でできるものではないし、まして、何もせずに見つけることはなおさら困難である。
『自分を知る』という“宝物”は、これからの長い人生において大いに役立つに違いない。
学習面はもちろんのこと、何か新しいことに挑戦するとき、様々な情況で生かすことができるはずだ。
さて、彼はというと、早々に目標の4個を達成し、すでに気持ちは川底で発見したヤゴに向いていた。「おれのペットにする!」のだそうだ。
2013年
6月
04日
火
深くても30cmもない沢(小川?)でのトパーズ探し。ひんやりとする水の水温は、冷たすぎず水遊びにはちょうどよい。太陽の光が川底の花崗岩に反射して、微妙に揺れながら作り出す模様も見ていて飽きることはない。どこか高い木の上でハルゼミが鳴いている。
こうした環境では、子ども達はすぐに裸足になりたがる。水の流れを足で感じ、自然の感触を足の裏から楽しむ事ができるからだろうか。
「裸足って気持ちがいい!」思わず声に出す子供もいるほどだ。
どこか、適度な流れのあるそれ程深くない所で、大きめの石に腰をかけ、裸足で水を楽しみながら、ふるいを使ってトパーズを探す。なんとのどかで贅沢な体験だろう。
今は分からなくても、いつかきっと気が付くはずだ。まさに“宝物の体験”だったと。
残念なことに、身近な環境では、段々と裸足になることができる、あるいは裸足になりたくなるような自然環境が減少している。
だからこそ、こうした子ども達が豊かな自然体験ができる環境を、いつまでも残さなければいけない。そのために必要なことは、まずは自然に浸かって自然を感じることだ。
2013年
6月
03日
月
トパーズは11月の誕生石。鉱石好きの子ども達は、そうした情報をよく知ってはいるが、実物を見たことのある子供はそんなにはいない。まして、自分で採集したことのある子供は皆無である。そんな彼らにトパーズ採集を提案すれば、どんな反応が返ってくるのかは言うまでもない。
必要な道具はスコップと、ふるい用の金網ザル。後は子ども達の中で眠っている集中力だけ。
目指すは岐阜県中津川の沢。川底の砂をすくってふるいにかけるのだが、お天気が良ければ、透明度の高いトパーズがキラリ!と輝くからすぐに分かる。もちろん簡単には見つからないし、この作業を何度も何度も繰り返す。しかしながら、一度トパーズを発見すると、その感動が子供のやる気に火を付ける。時には火がつきすぎて、終了時間が延びてしまうことすら珍しくないほどだ。
こうして、苦労して自分で採集したトパーズは子供の宝物となる。その値札には価格ではなく、感動体験の情報が、ぎっしりと書き込まれているに違いない。