倒木や木の枝を使って秘密基地を作った。屋根と地面にはシダの葉をしきつめる。
わずか一畳半ほどの広さにもかかわらず、そこはまさに現実とは異なる世界だ。
もちろん扉など存在しないが、作った者だけが入室が可能で、たとえ上級生であっても、無断で立ち入ることは許されない。それが暗黙の了解であり仲間の証でもある。
今、小学二年生が三名、なかでお弁当を食べている。
何を思い、何を話しているのだろう。
その姿はもはや小学生ではなく、一人のハンターであり、戦士でもある。
だからこそ私は、近寄ることすら躊躇ってしまう。
大人であるが故に、なぜか大切な物を壊してしまいそうな気がするからだ。
私にそうさせないのは、彼らに投影された子供時代の私自身なのかもしれない。
自然のかけらで囲まれた彼らの世界では、太古から未来へと様々な夢や想いが飛び交っているに違いない
まさに子供にとっての秘密基地は、富・夢・想・家なのだ。