乾燥した竹を持って天竜川の河川敷に行った。
すこしでも本格的な弓矢を作るのが目的だ。
まずは焚き火を起こして、竹をあぶり、更に水分を飛ばす作業を行う。
その後は、カッターで角を削り取り、持ち手の部分に麻ひもを巻いて結ばずにとめる方法を伝授する。
次は竹の両端に刻み目を入れロープ(弦)をとめる『矢はず』を作る。
「『彼は来るはずだ!』の『はず』はこの矢はずからきているんだ!」と伝えるも、あまり反応を示さない。
なぜなら、「早く作ってシカやイノシシを狩りに行きたい!」のだそうだ。
気分はもうハンター。『はず』なんかにこだわっていられないのだ。
『こんなはずではなかった!』という想いをぐっと飲み込んで、次の指示を出す。
目の粗い紙ヤスリで竹を磨くように伝えるのだが、誰もがめんどくさそうな表情を見せている。
それならと、私は4年生のS君の竹を取り、その一部を力を込めて磨いてみせた。
わずか30秒程でも予想以上にツルツルだ。
まだ摩擦熱で熱くなっているその部分を指さして、彼に触ってみるよう無言で促してみた。
すると彼は、私の意図するところを読み取って、指先でスルスルと触った。
その瞬間、「えっ?」という驚きの表情を見せたかと思いきや、彼はニタリと笑い、私から紙ヤスリを奪うようにして磨き始めてしまったのだ。
そのあとはもう一意専心。座っても立っても、あるいは歩きながらでも磨き続けたのであった。
まさに子供を動かすには言葉は必要ないのだ。心を動かす事実を見せることができれば。