試行錯誤って…

「あっ、すご~い!」

彼は、こう叫んだ時にはもう走り出していた。太いツタが巻き付いた木を見上げて考えている。もちろん、どうしたら登ることができるのか、そのルートであり、方法だ。

考えているだけでは分からないから、ある程度目安が付いたら、まずはやってみる。

やってみると、ツタが揺れたり、足場が滑ったり、あるいは次へ進むルートが困難だったりと、予想外のことが次々と起こる。だから、そのたびに考え、もどってはやり直す。が、決して『手伝って!』とも『教えて!』とも言わないし、『できない』と諦める事もない。

『あそこまで登りたい!』。

その想いが強いからこそ彼の視線は上を向いたままなのだ。

やがて、目指す地点に登ることができた彼の視界には、一体どんな世界が広がっていたのだろうか。それは人に教えることができない、そして登ったものにしか分からない特別な世界なのだ。